「人道を守る」という価値観を世界市民として共有していく

赤十字シンポジウム2016で伝えたかったこと (4/4)

http://www.nhk-p.co.jp/event/detail.php?id=658

引き続き、「赤十字シンポジウム2016:複雑化する世界の中で~今求められる人道支援とは~」で、私が発言した内容の要約をご紹介したい。


自分を中心に置いて広がっていく関心の輪

私自身も一番大事なのは、自分の生命と健康、そして尊厳である。次に身近な家族、さらにその周りに広がっている友人、知人たち。自分を中心に置いた、いわゆる関心の輪である。

その同心円をどんどん広げていけば、グラデーションで薄くはなっていくけれども、人類みなを「われわれ」であるとみなしていくことができるのではないか。

自分自身を大事にしつつも、その大きな輪の中で世界市民としての視点を持つことができれば、少なくとも輪の中にいる人びとに無関心ではいられないし、その人たちをわれわれの敵とみなすこともできないだろう。そういう意味では、利己心と利他心は相互に排他的なものではないと言える。

情報化社会が世界市民を増やしていく

私はInstagramをやっているが、そこに愛犬の写真をアップすると、ブラジル人からコメントがついたりする。それに対して、私もあなたの犬もかわいいねみたいなコメントを返し始めると、関心の輪という同心円が地理的な距離を越えて広がっていくのを実感できる。

外国に関する情報がほとんどマスコミを通じてしか手に入らなかった時代から、情報化社会になって、個人どうしがSNSなどでつながり始めた。これまでは、グラデーションの薄かった地球の裏側にさえも、飛び地のように濃い関係ができてくることによって、世界市民というのが絵空事ではなくなっていく。

赤十字の本質は理念を共有する人びとの行動や活動にある

赤十字というのはアンリ・デュナンという若き青年実業家の戦時下における「人道問題」に関する発見とその対応策提案が、普遍的な理念や原則になっていき、それが単なるお題目にとどまることなく、現実的なムーブメント、すなわち活動として世界全体に展開されてきたという歴史がある。

赤十字の本質は、理念に共感し、それを共有する人々が実践する日々の行動や活動の中にある。そして、人道を守るという理念は、基本的人権のさらに基盤部分である、われわれが最も大事にしなければいけない人間の生命、健康、そして尊厳を守るという考えである。

「人道を守る」という価値観を世界市民として共有していく

この価値観は赤十字の原則というよりも、人類が共通に、部族や民族、国や宗教を越えて共有できる価値観や規範ではないか。「われわれ意識」の単位がどんどん小さくなっていく中で、すなわち国の機能がだんだん限界を迎えていく中で、その小さなアイデンティティも持ちつつも、同時に人道を尊重するという人類共通の価値観も共有していくことはできないだろうか。

そして、もしも世界のどこかに人道の危機があれば、自ら駆けつけてでも何とかしてあげたいという思いを共有することはできないだろうか。

このような世界市民の意識を持つことが、今ばらばらになりかけている世界をもう一度、何とか立て直していく原動力となるのではないか。

ひとりの人間として、ひとりの世界市民として

このような考えのもと、私も若い学生たちと一緒に自らも学び、日々発見をしながら、教育に携わっていきたいと思う。また、今後もひとりの人間として、そしてひとりの世界市民として、赤十字の「人道を守る」という考え方に共感し、そのムーブメントに参加していきたいと思っている。


以上4回にわたって、「赤十字シンポジウム2016:複雑化する世界の中で~今求められる人道支援とは~」での私の発言内容についてご紹介してきた。赤十字のこと、人道のこと、そして世界市民のこと。これからも学生のみなさんと一緒に考えていきたいと思う。