シィIFRC事務総長という巨樹に出会えた奇跡が与えてくれたもの

先日の記事でご紹介した通り、2017年10月2日(月)明治学院大学白金キャンパスにて、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)事務総長 エルハジ・アマドゥ・シィ氏の特別講演会が開催されました。

大学生や高校生を中心に160名近い聴衆が、IFRC会長である近衞忠煇日本赤十字社社長とシィ事務総長のお話に聞き入りました。現代社会における人道的課題とそれに取り組む国際赤十字の活動について理解を深めるとともに、国際的な人道問題を「他人ごと」ではなく「自分ごと」として捉え行動に移していくための気づきやきっかけが得られたように思います。

大学のWebニュースにコメントを求められましたので、以下の文章を寄稿しました。こちらにも転載いたしますので、よろしければご覧ください。


シィIFRC事務総長という巨樹に出会えた奇跡が与えてくれたもの

 アフリカ・セネガル出身のシィIFRC事務総長は、2メートルを超える長身。外見だけでなく、その人格もまた、アフリカの荒野にただ一本そびえ立つ巨樹のよう。彼を目指して、小さくか弱き生き物たちが続々と教えと救いを乞うために集まってくる様が目に浮かぶ。まさに講演会終了後の教室では、高校生や大学生たちが続々と彼の周囲に引き寄せられてきては次々に握手やハグを求め、その光景は印象的であり感動的であった。私もまた年甲斐もなく彼に強くしがみつき、何度も肩を引き寄せてもらいながら、思わず涙が滲んできたことが忘れられない。

 講演の中でシィ事務総長は、明治学院大学とその卒業生に対する高い評価と深い敬意を示してくださった。本学の教育理念である「Do for Ohters」が赤十字の基本原則や思想と一致していること、そして卒業生たちがその理念を「Doing Good for Others」という行動で実践していることを、国際的な赤十字活動の中で献身的に働いている堀乙彦日赤国際部長に代表される本学卒業生たちの名前を次々と挙げながら語ってくれた。学長・副学長を始めとする教職員一同、そして何より明治学院の現役の高校生や大学生たちは、とても誇らしい気持ちと高揚感を抱くことができたのではないだろうか。ここにも彼の優しく思いやりのある人格が表れていた。

 シィ事務総長は、今世界が直面している人道的課題を「3つのD」という視点から語った。Disaster(自然災害)、Displacement(難民や避難民などの問題)、Disease(感染症)である。そして、第三次世界大戦が起こっているわけでもないのに、これらの諸問題が規模や深刻度の点では第二次世界大戦の惨禍をも上回るようになりつつあることを、具体的な場所や数字を挙げながら説明してくれた。

 人道的課題がグローバル化や複雑化の傾向を強める中で、各国の赤十字社や赤新月社が果たしている役割に加え、190カ国を超える各社を束ねて調整を行う連盟の活動の重要性がさらに増してきていることについてシィ事務総長は説明し、その連盟のトップである会長職を8年にわたって担ってきた近衞忠煇日本赤十字社社長の稀有で気高い貢献についても謝意と賞賛を送った。

 そして最後のディスカッションでは、高校生や大学生からの質問や感想に対して、丁寧かつ率直で思いやりにあふれた言葉を返してくれた上、「君たちを見てわれわれの未来に希望を持つことができた」「われわれを未来に導いていゆくのは君たち若者だ」とエールを送ってくれた。

 二日間という限られた訪日日程の中で、シィ事務総長は唯一の講演先として明治学院大学を選んでくださった。名誉ある機会を与えてくださったことに心から感謝したい。

 人道的支援を必要としている人々と、他国や他者への支援が可能な状態にいるわれわれとの間に優劣の違いなどなく、運の良し悪しがあるだけであり、いつ何時われわれも支援や救援を求める立場になるのかわからないと実感することができた。そして、苦しんでいる人々を支援するということは義務ではなく、恵まれた立場や状況にいるわれわれの「Privilege(特権)」であるのだから喜んで行使したいと思えませんかと、シィ事務総長は語りかけてくれた。この言葉は生涯私の心の中に居続け、これからの私の行動を後押ししてくれることになるだろう。

 今回の貴重な講演会は、近衞社長を始めとする日本赤十字社のみなさまのご支援とご協力によって実現することができた。また、パロ駐日スイス大使ご夫妻の臨席という名誉にも浴するなど、関係者の方々のご理解と献身にも支えられた。そして、大学を挙げて準備と運営を担ってくださった事務局の各部署のみなさんにも改めて謝意を表したい。

 奇跡を実現してくださったすべての方々に心よりの感謝を込めて。

2017年10月5日
経済学部経営学科教授
森田正隆